【ヴィクトリアマイル】アーモンドアイがため息の出るほどの強さでV 2着で次走狙える馬とは?

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アーモンドアイに託された未来とは
その馬名の由来である黒く大きな瞳に以前と異なる観客がいない競馬場はどう映っただろうか。桜花賞以来9戦続けてGⅠを走り、超満員のスタンドでレースをしてきたアーモンドアイ。
2020年緒戦ヴィトリアマイルを勝ち、通算成績【8-1-1-1】うちGⅠ【7-0-1-1】はジェンティルドンナやウオッカにはない“負けない”強さの証。キャリアでもっとも悪い着順だった有馬記念(9着)以来の出走はドバイへのカラ輸送などの狂いも手伝い、不安視する声があった。前走有馬記念も香港遠征を熱発で回避、似たような狂いからのローテ変更だっただけに続けざまの不運からリズムを崩しているととられた。
アーモンドアイ自身の問題は内包していたものの、牝馬限定の相手関係、東京マイルという舞台を考慮すれば能力は突き抜けて最上位。単勝140円はおいしいオッズだと考える人も多かった。
かつて凱旋門賞失格後にジャパンカップを勝ったディープインパクト、5歳春から秋にかけて落ちた成績を払しょくしたジェンティルドンナの有馬記念、5歳秋にこれまで勝てなかったジャパンカップをもぎ取ったウオッカ。歴史に名を残す名馬はみな自らの力で閉ざされかけた道をこじ開ける強さがある。アーモンドアイもまたヴィクトリアマイルで自らに漂う悪い流れを断ち切り、先述3頭に並ぶJRA+海外GⅠ7勝目をあげた。
記録はシンボリルドルフ、テイエムオペラオー、ディープインパクト、ウオッカ、ジェンティルドンナ、キタサンブラックに並んだ。このJRA+海外GⅠ7勝の壁を超えること、それがアーモンドアイに託された未来である。
2着サウンドキアラ以下から見えてくる適条件とは
レースはディメンシオン、セラピアと先行馬が続けて除外になり、コントラチェックが控えたことでマイルの世界レコードホルダー・トロワゼトワルの単騎逃げ。前半800m45秒6は馬場を考えればミドルペース。乱ペースにならなければ控えた組に出番がない東京の芝、サウンドキアラの松山弘平騎手もアーモンドアイのC・ルメール騎手も芝状態と流れを読み切った核心的な騎乗だった。
軽く仕掛けて突き放したアーモンドアイは別格として、今年重賞3連勝のサウンドキアラもある程度の位置で流れに乗れることで安定感あるレースができることを証明した。今後は斤量や距離選択などカギはいくつかあるだろうが、活躍は確実だろう。
後半800m45秒0では中団より後ろにいた組は手も足も出なかった。中団外目をスムーズに追走した3着ノームコアは前年覇者の意地を見せた。速い時計に強い異色のハービンジャー産駒、条件が合わないとモロいところがあり、今度も適条件かどうかのジャッジ次第で買うタイミングはあるだろう。
4着トロワゼトワルは単勝万馬券の12番人気ながら大健闘。9月中山、極端に速い野芝開催以来の快走も今後馬券を買うヒントになる。今日のように単騎で行ける組み合わせ、絶好の速い時計が出る馬場という条件がそろうことだ。
7着ラヴズオンリーユーはアーモンドアイと似た臨戦過程、しかも2歳11月以来のマイル戦では仕方なく、悲観することはない。一戦必勝型で思うように使えない現状では無事に出走したことを評価すべきであり、中距離路線で順調であればチャンスは来る。
適条件がはっきりした馬たちとは対照的なのが5着ダノンファンタジーだ。馬体重-20キロが好走要因のようで走る条件は未だつかみきれない。トライアル好走→本番凡走を繰り返すディープインパクト産駒によくあるタイプ、クラシック無冠がこの馬の力と言われればそれまでだが、今回の5着をどう判断するかは難しい。インの好位で流れに乗った展開利の5着なのか、展開には恵まれつつも最後までしっかり走った5着なのか。人気面でどうしても過剰評価されがちなタイプだけにこの結果をどう受け取るかはそれぞれだろう。馬体重-20キロになにか今後変わるきっかけがあったようにも思える。
東京開催のGⅠもいよいよオークス、ダービーを迎える。アーモンドアイが観た無人のスタンドは残念ながら続いてしまうが、再び彼女の瞳に超満員のスタンドが映ることを願うばかりである。そしてそれは我々にとって歴史的名馬をライブで観られる貴重な機会を意味する。競馬場に行きたいという本心をもはや隠すことができない。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『
築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』にて記事を執筆。
YouTubeチャンネル『ザ・グレート・カツキの競馬大好きチャンネル』にその化身が出演している。

