【NHKマイルC】GⅠ獲りへ視界良好 2歳女王を破るのは連対率100%の堅実派

東大ホースメンクラブ

2020年NHKマイルカップデータインフォグラフィックⒸSPAIA

ⒸSPAIA

ハイペースなら差し馬有利

5月10日(日)に東京競馬場で行われるNHKマイルC(GⅠ・芝1600m)。3歳マイル王決定戦にふさわしい精鋭18頭が東京競馬場に集結した。桜花賞2着のレシステンシアやトライアルを快勝したタイセイビジョン・ルフトシュトロームなどが上位人気と目されるなか、栄冠をつかむのは果たしてどの馬か。また、高配当をもたらす穴馬はどれか。今週もデータを踏まえて検討していこう。

はじめに、当該レースにおける過去10年の傾向を分析する。

NHKマイル・過去10年 1~3着馬の4角順位/平均タイム(11年を除く)ⒸSPAIA

過去10年で見ると毎年のように4角10番手以下に控えた馬が馬券に絡んでおり、全体的には差し傾向が強いレースのようだ。前半のペースと着順との関係も比較的明確であり、前半3Fが34秒を切る展開なら後方待機勢が台頭し、34秒台後半から35秒台くらいに収まればキッチリ前が残っている。直線の長い舞台ということもあり、スピードに任せて押し切るような競馬は容易ではない。

このような事情を反映してか、マイル以下を中心に使われてきた短距離志向の馬よりも中距離戦の経験がある馬の活躍が目立つ。実際に、1800m~2000mの重賞に出走した経験のある馬が【5-7-7-53】で複勝回収率140%とよく穴を開けているのに対し、非該当馬は複勝回収率50%にとどまる。また、馬券に絡んだ19頭のうち15頭は中団から後方に控える競馬をしていた。「中距離志向×差し脚質」の馬はキッチリ押さえておく必要がありそうだ。

高速決着が濃厚

過去3年の東京芝1600m枠番別成績ⒸSPAIA

次に枠番別傾向を確認。データ上では内と外との偏りはほとんど見られず、基本的に有利不利はないものと考えて良い。先週の東京芝コースは枠番的にやや外目の馬の活躍が目立っており、外差しもある程度利いていた印象。外枠の距離ロスはそこまで気にする必要はなさそうだ。

先週土曜の青葉賞の勝ちタイム2.23.0はダービーレコードに0秒4差と迫る好タイムであったし、日曜のスイートピーSではデゼルが32.5という破格の上がりで勝利を収めた。開催が進むにつれて馬場の高速化が進んでいるとさえ言えるだろう。土曜の競馬を見つつ週中の降雨の影響を見極める必要はあるが、引き続き高速決着が期待できそうだ。

さて本レースのカギを握るのは、何といっても人気のレシステンシアだろう。前走の桜花賞では8枠からスムーズに先行するほぼ完璧な立ち回りで2着に入ったが、今回もスピードを活かして自分の競馬に徹するのが濃厚。ペースが上がるのは必至だろう。馬券的にはレース傾向的に利がある差し馬が中心と見る。

本命はタイセイビジョン

高速決着への適性と差し脚質という点を評価して、タイセイビジョンを本命視したい。2歳時の京王杯2歳Sでレコード勝ちを収めるなど高いレベルで存在感を発揮してきたこの馬。近走はいずれも前がハイペースで飛ばすなかで末脚を伸ばしており、特に3走前の京王杯2歳Sでレコード勝ちを収めている点は評価すべきポイントだ。連対率100%という堅実派でもあるし、軸には最適と見た。

2番手にはやや人気薄のところでウイングレイテストを推す。前走のニュージーランドTでは不利の大きい大外枠から直線で追い込んで3着。4角で勝ち馬と同じ位置取りから0秒1差とほとんど負けておらず、枠順の不利を考えればほぼ勝ちに等しい内容と言ってよい。朝日杯・ファルコンSは流れ込むような競馬になり敗れたが、じっくり脚を溜めることができれば長い直線を活かして差し脚を伸ばせるはず。東京コースに替わって狙いたい一頭だ。

3番手には3戦3勝のルフトシュトローム。前走の勝ちタイム1.33.0は確かに優秀であり、府中の高速馬場に対応する素地を感じさせる勝ち方であった。一方で中山マイルという特殊なコースしか経験がなく、好調のレーン騎手鞍上で人気するのを踏まえれば妙味はやや薄いというのが正直な印象ではある。

4番手には同じく無敗のサトノインプレッサ。毎日杯からの参戦は過去10年で【1-3-0-6】と、数字の上では期待十分。ただし過去3戦はいずれも時計がかかる馬場で勝利を挙げており、これまでと大きく異なる高速馬場でのパフォーマンスは未知数と言える。一方で「中距離タイプ×差し脚質」という好走パターンにピッタリ合致しており、展開的に多少立ち遅れてもリカバリーの余地はあると見てこの評価にした。

相手筆頭にはレシステンシア。この馬の実力から考えてスピードの違いで押し切るという結末もあり得るだろうが、先述のとおり直線の長い府中でのハイペース先行はそう簡単に決まらない。初めての左回りおよび関東圏への輸送、さらには前走のダメージなども考慮すれば、相手評価が妥当と見る。以下、スプリングSの好走が光るサクセッションと、隠れた実績馬プリンスリターンの2頭まで押さえておきたい。

▽NHKマイルC予想▽
◎タイセイビジョン
○ウイングレイテスト
▲ルフトシュトローム
△サトノインプレッサ
×レシステンシア
×サクセッション
×プリンスリターン

《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開中。

おすすめ記事