【天皇賞春】武豊騎手でもキセキは押さえまで 東大HCが推すオッズ的に妙味のある馬は?
東大ホースメンクラブ
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2度の坂越えを制する者は…
5月3日(日・祝)に京都競馬場で行われる天皇賞(春)(GⅠ・芝3200m)。春の古馬・長距離王決定戦に昨年の覇者フィエールマンや前哨戦を制したユーキャンスマイル、ミッキースワローなど14頭が顔をそろえた。2度の坂越えを経て春の盾を手にするのは果たしてどの馬か。今週もデータを踏まえつつ検討していこう。
はじめに、当該レースにおける過去10年の傾向を分析する。
向正面の半ばから3角にかけて少しずつ上り、4角にかけて一気に下るように設けられた坂が何といっても京都外回りコース最大の特徴。これを制するものがレースを制すると言っても過言ではないだろう。
坂を下るスピードを利用して3角から4角にかけて位置を上げてきた馬がしばしば上位に入っており、15年のゴールドシップや古くはディープインパクトなどロングスパートが決まった例もある。序盤でやや後ろからの位置取りになったとしてもチャンスはある一方で、4角までに位置を上げられるかどうかが勝負の分かれ目と言えよう。
したがって、末脚勝負を苦にしないことが肝要。特にこの時期は馬場コンディションが良好であり、直線でのスピード勝負となる傾向が顕著だ。実際に、過去10年における連対馬の上がり平均は稍重の年を含めても35秒を切っている。3000mを超える長距離戦ながら上がりの速さが求められる点には注意しておきたい。
ヒントは前哨戦に…
いつもなら枠番別の傾向について分析を行うところだが、京都芝3200mは1年でこのレースしか施行がなく直近のサンプル数が少ないため割愛することにしたい。そのかわりに、本項ではメンバーの多くが出走した重賞4レースについて詳しく分析を行う。
まず年初の日経新春杯について。同じ京都ということで後半のラップ傾向は本番と類似しており、そういう意味では今回とも直結するものと考えたい。ハンデ52kgに恵まれた面はあるが、ラスト3Fのラップ11.8-11.7-11.8という流れで4角6番手から差し切ったモズベッロは間違いなく評価できる一頭だ。
一方でダイヤモンドSはラスト3Fで減速し続け、最後の1Fで13秒フラットを記録する極端な消耗戦となった。2着に追い込んだメイショウテンゲンの上がりが最速で37.2というタイムであり、レースの質が今回とは大きく異なっている。そういう意味で、連対馬2頭の評価に直結するとは言いにくい。
阪神大賞典では後半の残り5Fから1F地点までが11秒台後半から12秒で流れ、スタミナが問われる展開となった。天皇賞と直結するとは断言できないが、長距離適性を測るうえでは信頼に足るレースだろう。そういう意味で、すでに長距離実績のある2頭が1、3着に入ったなか2着に健闘したトーセンカンビーナの適性は証明されたと言ってよい。
馬場の内目が傷んだ馬場状態で行われた日経賞はコーナーで外を回した馬による決着となった。展開の有利不利が明確であった故に、活躍馬の過大評価は避けたいところだ。特に勝利したミッキースワローは名うての中山巧者であるし、今回の舞台でどれだけやれるかは未知の部分が大きいと考えられる。
以上を踏まえて、出走馬の検討に移ろう。
フィエールマンの連覇に期待
本命はフィエールマンとする。前走の有馬記念は早めに進出する競馬で4着に粘り、海外遠征のダメージを不安視されるなかでも実力を示した。有馬記念からの直行で馬券圏内にきたのは97年サクラローレル(2着)以来で前例がほとんどないが、余裕を持ったローテで結果を残してきたこの馬なら心配は無用だろう。
前の章で前哨戦を分析しながら直行組を本命にして拍子抜けした読者の方もいらっしゃることとは思うが、先日の皐月賞しかりGⅠ直行がトレンドとなっている昨今、仕上がりは万全と見て問題はないはず。もともとリピーターの活躍が目立つレースであるし、フェノーメノ、キタサンブラックに次ぐ連覇に期待したい。
対抗には前哨戦での活躍が目立ったモズベッロを推したい。京都では【3-1-0-1】というコース巧者であり、先述のとおり2走前の日経新春杯の競馬は秀逸な内容だった。日経賞でも直線で不利を受けながら2着と好走しており、実績のないコースでも崩れなかった点は評価に値する。距離さえ克服できれば馬券圏内に入る力はあるはずだ。
3番手にユーキャンスマイル。阪神大賞典では2着に0秒3差をつけて快勝したが、2着にこれ以上の着差をつけた馬の次走・天皇賞成績は86年以降で【5-0-4-2】と安定しており、当然ここでも軽視はできない。ただ主戦の岩田康騎手からの乗り替わりというアクシデントもあり、順風満帆とは言い難い。昨年も直線で伸びきれず5着に敗れており、前走だけで過大評価するのは避けたいところだ。
4番手にトーセンカンビーナ。先述のとおり阪神大賞典で長距離適性は証明済みであるし、もともとスタートが鈍いタイプだけに前半で多少遅れてもリカバリーが利く今回の舞台は戦いやすいはず。オッズ的にも妙味がありそうな一頭だ。
以下、相手にはミッキースワローとキセキを指名する。キセキは前走で気性の問題が露呈したかたちであり、武豊騎手鞍上で人気もするだろうし押さえ程度の評価が妥当と判断した。メイショウテンゲンに関してはやはり時計のかかる馬場・展開でこそというタイプと見て今回は無印としたが、仮に降雨などがあれば再考を要するかもしれない。
▽天皇賞(春)予想▽
◎フィエールマン
○モズベッロ
▲ユーキャンスマイル
△トーセンカンビーナ
×ミッキースワロー
×キセキ
《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開中。
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