【天皇賞春】ディープインパクト産駒を封じる早め策を!GIで羽ばたく本命馬とは?

門田光生

2020年天皇賞春データインフォグラフィックⒸSPAIA

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予定通りのぶっつけ本番はむしろプラス要素なのか

今年の皐月賞は年明け初戦で挑んだ馬のワン・ツーで決着。目標とするGIに予定通りぶっつけで挑んで来るということは、当然ながらその期待に応えるだけの能力がある馬。また、陣営も万全の態勢に仕上げる自信があってこそだろうの選択で、最近ではむしろプラス評価を与えた方がいいのではとさえ思ってしまう。

以前に比べると短期放牧を挟む馬が格段に増えたが、そのノウハウの積み重ねによって、外厩での仕上げがトレセンレベルになったということか。近年では2017年大阪杯のキタサンブラック、2019年皐月賞のサートゥルナーリア、2019年天皇賞・秋のアーモンドアイなどがいい例である。

令和2年5月3日に行われる第161回天皇賞・春に出走するフィエールマンも、2018年菊花賞でラジオNIKKEI賞以来という異例のローテーションで勝っている。昨年、天皇賞・春を制した時は年明けに1戦していたが、今回は有馬記念以来の実戦。

当然ながら阪神大賞典や日経賞を経由して来た組と比べて実績のないローテーションとなるが、この傾向はこれからも増えていくと思われ、レース間隔に関しては、今回も有利不利を考えない方がいいだろう。

前走1、2着馬が好走

天皇賞・春出走馬の年齢
天皇賞・春出走馬の性別

今回も過去10年のデータを中心に分析してみる。

まず年齢だが、各世代が満遍なく馬券に絡んでいる。気になるのは7歳以上の勝率が0%ということぐらいか。ちなみに、今回の出走馬で7歳以上の馬はミライヘノツバサだけ。

また、牝馬は出走頭数自体が少ないので何ともいえないが、【0-0-0-6】と厳しい数字。小柄な馬体で頑張って走る姿が人気のメロディーレーンだが、さすがに善戦がいっぱいか。

天皇賞・春出走馬の前走着順

最も使えそうなデータは前走着順。前走で連対していた馬【8-6-6-51】に対して、3着以下だと【2-4-4-91】。勝率で5倍、連対率でも3倍以上の差がある。

前走好走の勢いに素直に乗るのが正解のようだ。

皇賞・春出走馬の前走クラス

以前に比べるとメンバーの質が落ちたといわれる天皇賞・春だが、さすがに前走でGI、GⅡを使った馬の方が、GⅢ以下を使った馬より好走率が高い。ある程度の格は必要だ。

なぜか不振のキングカメハメハ産駒

今回は使えそうなデータが少ないのと、長距離は血統が大事ということで活用してみる。

天皇賞・春出走馬の父系

このレースはステイゴールドが4勝と強さを発揮。

ステイゴールド産駒の特徴といえば直線の短いコースが得意という印象が強いが、ベストと言えない京都の外回りでこれだけの好成績を残すのだから、いかにスタミナと底力に優れた種牡馬なのかが分かる。

ちなみに、同産駒でこのレースを制したフェノーメノ(青葉賞、ダービー2着)、ゴールドシップ(共同通信杯)、レインボーライン(アーリントンカップ、菊花賞2着)と、天皇賞・春を勝つ前に外回りの競馬に実績があった馬ばかりだ。

今年はエタリオウ、スティッフェリオの2頭が出走している。重賞実績を振り返ると、エタリオウは菊花賞2着、青葉賞2着、神戸新聞杯2着と、勝ち切れないながらも一応は広いコースでの実績がある。

対するスティッフェリオは福島記念、小倉大賞典、そしてオールカマー。こちらは典型的な小回り向きのステイゴールド産駒といえるだろう。

【0-5-3-15】と勝ち切れないハーツクライ産駒も気になるが、問題は【0-0-0-14】と全く結果が出ていないキングカメハメハ産駒。

今回有力馬の1頭であるユーキャンスマイルは3000m超の重賞を勝っている、数少ないキングカメハメハ産駒の1頭だが、昨年ダイヤモンドS勝ちから3番人気で挑んだこのレースでは5着。

母の父に淀の長丁場を得意としたダンスインザダークが入るが、この産駒は菊花賞では活躍するのに、なぜか天皇賞・春とは相性が悪かった。さらに、Sharpo、Known Fact、ソーブレスドと軽めのスピード血統が入っており、キングカメハメハ産駒の枠を超えたステイヤー血統とは思えない。

キセキはキングカメハメハ産駒のルーラーシップが父親。ルーラーシップ産駒はキセキが菊花賞を勝っているように3000m強の競馬でも全く問題ないが、気になるのは出遅れ癖が出てきたこと。ルーラーシップの現役時代を知っていれば、有馬記念や阪神大賞典でその姿が重なったファンも多いのではないか。

古馬になってからは、強い競馬をしてもGIで勝てない、というところまで似てきた(香港へ行ったら勝てるかも?)。今回も内容は強かったが、結果は……というパターンのような気がしてならない。

京都芝2400m以上の種牡馬成績

2010年1月から今年の第2回京都開催までの長距離戦における、今回の天皇賞・春に登録している馬の種牡馬成績を調べてみると、1位はディープインパクト、2位はキングカメハメハとなる。

キングカメハメハ産駒は京都の長距離と相性が悪いわけではないだけに、天皇賞・春で結果が出ていないのは余計に気になる。3位のステイゴールドは思った以上に数字がよく、ステイヤー種牡馬ということを再認識。4位ハーツクライは天皇賞・春と同様に2着が多いことも分かった。

そのほか、オルフェーヴル、ルーラーシップ、ディープブリランテ、トーセンホマレボシなど、サンプル数は少なくても適性がありそうな数字を残している。

2015年の再現?

今回は加点できるデータが前走着順くらいしかなく、それをクリアしたのはトーセンカンビーナ、ミッキースワロー、ミライヘノツバサ、モズベッロ、ユーキャンスマイルの5頭。

逆にデータで消去できたのはミライヘノツバサ(年齢)、メロディーレーン(牝馬)、オセアグレイト、ハッピーグリン(前走クラス)。これに連対率0%のキングカメハメハ産駒のユーキャンスマイルを加えて5頭。ミライヘノツバサとユーキャンスマイルは加点も減点もあるが、今回は消せる馬が少ないので減点重視。

種牡馬の傾向から見るとディープインパクト産駒の2頭、そしてステイゴールド産駒では外回りでも走れているエタリオウあたりになるか。ディープ産駒で前走好走の加点があるのはトーセンカンビーナで、これは当然ながら有力候補。母はHawk Wingの代表産駒でもあり、アメリカンオークス(米GI)などの重賞を勝った一流馬。母系はステイヤーとはいえないものの、それなりのスタミナがあり、現代の長距離競走なら十分こなせると思われる。

加点組の1頭、ミッキースワローは重賞勝ちがセントライト記念、七夕賞、日経賞と小回りの競馬場ばかり。これは3歳時の京都新聞杯、そして次走の福島の条件戦を見て感じていたのだが、間違いなく長く足を使えないタイプ。新潟大賞典で2着したこともあるが、直線の長いコースだとどうしても切れ負けしてしまう傾向。

実際、近5走は中山か福島しか使われておらず、陣営もその特徴を把握していると思われる。要は切れ味勝負ではなく、いかに上がりのかかる展開に持ち込むか。鞍上の横山典騎手は2015年にゴールドシップで制しているが、その時はペースが落ち着いた2周目向正面で一気に動いて内回りのような競馬をしたのが勝因。

今回も何らかの策を講じてきそうな予感がする。ちなみに、父トーセンホマレボシは京都の長距離をほとんど走っていないが、【1-1-0-1】と適性がありそうなデータがある(ただし、着外の1回はミッキースワローが記録した菊花賞6着)。

加点組の最後はモズベッロ。阪神大賞典と並んで有力な前哨戦である日経賞で2着。2014年には日経賞組が1~3着を独占したこともあるが、実はこの年以降日経賞組は馬券に絡んでいないのは気になるところ。母系はともすればダート巧者と思わせる血が多いが、これもトーセンカンビーナと同じで、現代の長距離戦なら問題ないスタミナは内包している。

あとはディープ産駒のフィエールマンとメイショウテンゲンを。フィエールマンは令和のトレンドである「実績馬のぶっつけGI」。天皇賞というより、今の競馬の流れでは無視できない好データとなっている。

メイショウテンゲンは母が名うての京都巧者で、しかも遅咲きだった。菊花賞では結果を残せなかったが、古馬になって一段と力を付けたのは間違いなく、京都の長丁場で血の威力を発揮するかもしれない。

トーセンカンビーナもデータ的な死角はなさそうだが、今回は同じ加点組のミッキススワローに期待。長距離は血統と同様に騎手の腕も問われるレース。ミッキースワローはゴールドシップに似た特徴があるので、それを生かすために鞍上が後続に足を使わせるようなレース運びをしてきそう。

同時に、上がり勝負にならなければディープ産駒の末脚も封じられる。いいことづくしだ。同じ加点組のモズベッロも、もちろん有力候補の1頭。以下、ディープ産駒のフィエールマン、メイショウテンゲン。あとはステイゴールド産駒で外回りでもそれなりの走りをしているエタリオウを加える。キセキは父の現役時代の成績を考えると2、3着に来る確率は高そう。3連系のお供に押さえる。

◎ミッキースワロー
○トーセンカンビーナ
▲モズベッロ
△フィエールマン
×メイショウテンゲン
×エタリオウ
×キセキ

《ライタープロフィール》
門田 光生(かどた みつお)
競馬専門紙「競馬ニホン」で調教班として20年以上在籍。本社予想などを担当し、編集部チーフも兼任。現在、サンケイスポーツにて地方競馬を中心に予想・記事を執筆中。巷では長距離不要論があったり、なかったりしますが、血の偏りを防ぐためにも、また競馬のバリエーションを豊富にするためにも絶対に存続すべきだと思います。

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