【皐月賞】本当に二強なのか?高配の使者は鞍上に皐月賞男を迎えた馬

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皐月賞は両雄並び立たず
2020年4月19日(日)に中山競馬場で行われる第80回皐月賞。1週前登録が出て、ボーダーラインを確認して驚いた。1戦1勝のテンピンが抽選突破で出走可能となるのだ。2歳GIならいざ知らず、皐月賞でキャリア1戦の馬が出走可能というのは記憶にない。少なくとも1980年代半ば以降の皐月賞では、キャリア1戦で出走したケースは見当たらなかった。
これだけボーダーが低くなったのも、やはり無敗で挑む2頭の存在が大きいのだろう。ともに3戦3勝のGI馬で、皐月賞で雌雄を決する形。ホープフルSをGIに格上げした甲斐があったというものだ。ポテンシャル的にはコントレイルの方が上かな、とは思うが、サリオスの前走も文句なしに強かった。様々なスポーツやイベントが中止、もしくは延期を余儀なくされている中で、ギリギリでも何とか正常運転を保っている競馬だけに、夢と希望を与えてくれるようなレースを期待したい。
とはいえ、本当に二強対決で終わるのかどうか。波乱の目はないのか。今回も2010年~2019年まで10年間のデータを参考に検証してみる。
その前に、1、2番人気のオッズが3番人気以下を離している、いわゆる二強対決の構図となった過去の皐月賞は、はたしてどのような結果になったのか調べてみた。なお、ここでは当時の前評判というより、結果的にそのようなオッズとなったものを「二強対決」としている。
1990年以降で特に2頭の単勝馬券が売れたのは、1991年のトウカイテイオー(2.1倍)とイブキマイカグラ(3.7倍)、1993年ウイニングチケット(2.0倍)とビワハヤヒデ(3.5倍)、1999年ナリタトップロード(2.7倍)とアドマイヤベガ(3.3倍)、2000年エアシャカール(3.4倍)とダイタクリーヴァ(3.3倍)、2004年コスモバルク(2.4倍)とブラックタイド(3.8倍)、そして2007年アドマイヤオーラ(2.7倍)とフサイチホウオー(3.7倍)の6回。もしかすると、2001年のアグネスタキオン(1.3倍)とジャングルポケット(3.7倍)のように、一強だがオッズ的には2頭しか売れていないというパターンになるかもしれない。
このうち、二強同士で決まったのは2000年だけ。対して2頭とも連を外したケースは2回あった。両雄並び立たずという言葉が適切かどうか分からないが、少なくとも伏兵が台頭する余地は十分にありそうだ。
2着馬は栗東所属から


東西の所属別に見ると、美浦4勝に対して栗東は6勝。分母は栗東の方が多いので勝率はそう大差ない。しかし、2着は栗東所属馬が10回。美浦所属馬はここ10年で一度も2着になっておらず、連対率では栗東所属馬の方が上だ。
また、当日の天気がどうなるかはまだ分からないが、良馬場以外で行われたのは3回。連対した6頭は全て栗東所属で、美浦所属馬は2018年ジェネラーレウーノの3着が最高。雨馬場だと美浦所属馬が来ないこというデータがあるので参考までに。
最近では、トライアル組より共同通信杯からの直行組が結果を出していることも有名になった。ここ10年で共同通信杯組はトップの4勝をマークしており、続いてスプリングSの3勝。皐月賞と同条件で行われる弥生賞は1勝だが、2着には5頭が該当。2014年から隔年ごとに弥生賞組が2着に来ていて、昨年は来なかった。ということは、単純に考えて今年は来る番になるのだが、さて。
共同通信杯組を美浦所属馬のみに絞ると、勝率、連対率ともさらに数字がよくなる。共同通信杯組の美浦所属馬、今年でいえばダーリントンホールとビターエンダーは特に注意が必要だ。逆にいえば、共同通信杯を経ていない美浦所属馬はデータ的に強く推せないことになる。

共同通信杯組に勝ち馬が多く、弥生賞組に2着が多いということだが、前走距離で見るともっと顕著に表れる。前走1800mを使った馬【8-1-5-67】と1着馬が多いのに対して、前走2000mを使った馬は【2-8-5-56】と2着が圧倒的に多い。このデータは3連単でフォーメーションを組む時の参考になるだろう。

今年は出走への門戸が広いということで、役に立ちそうなデータが前走クラスと前走着順。条件戦やオープン特別を経て出走する馬も多いが、データ的には前走が重賞以外だと【0-3-1-38】と勝率0%。このうち若葉Sは【0-3-1-19】だから、重賞、もしくは若葉S以外のレースを使った馬は馬券に絡む率が0%ということになる。
「21世紀の皐月賞男」に期待
コントレイルはホープフルSからの直行で、これは昨年のサートゥルナーリアと全く同じパターン。当時は「実績のないぶっつけ本番」として消したが、全く問題なく勝ってしまった。令和に入ってぶっつけでGIに挑み、しかも結果を出しているケースが増えていることからも、ローテーションで割り引くことはできない。コントレイルを消すのはさすがに無謀だ。
一方のサリオスはどうか。同じぶっつけでも「前走が1800m、2000m以外」「共同通信杯組以外の関東馬」ということでデータ上は弱い。こちらは疑ってかかっていいだろう。
どれを1着候補とするかだが、ここ10年で8勝している前走1800m組から選択するのが筋だろう。さらに前走が重賞であること、関東馬なら共同通信杯を経ていることで、これに該当するのはヴェルトラゼンデ、コルテジア、ダーリントンホール、ビターエンダー、マイラプソディの5頭。
このうち、マイラプソディは共同通信杯で4着に敗れているが、前走で3着以下の馬は【0-2-3-67】と振るわない。あと、きさらぎ賞組は【0-0-1-7】。1番人気で挑んだサトノダイヤモンドでも勝てなかったように相性のいい前哨戦とはいえずコルテジアも厳しくなる。
残ったのはヴェルトライゼンテ、コルテジア、ダーリントンホールの3頭。この中で注目したいのはM.デムーロ騎手が騎乗するダーリントンホール。M.デムーロ騎手はここ10年で【2-1-0-4】と蛯名騎手と並んで最多勝利、通算で見ても【4-2-0-5】となり、21世紀に入って最も皐月賞を勝っている騎手でもある。皐月賞と相性のいい騎手を背に、皐月賞と相性のいい前哨戦を経由。軸はこの馬で文句なしだ。

2着候補だが、ここ10年のうち8頭が「栗東所属馬」「前走2000m」「重賞か若葉Sを経由」に全て該当する。今回、これに当てはまるアメリカンシード、キメラヴェリテ、コントレイルの3頭は外せないか。この3頭を厚めに、1着候補で振るい落とされたうち、連対率0%のきさらぎ賞組のコルテジアを除いた3頭を付け加える。
◎ダーリントンホール
○コントレイル
▲アメリカンシード
△キメラヴェリテ
×ヴェルトラゼンデ
×コルテジア
×マイラプソディ
《ライタープロフィール》
門田 光生(かどた みつお)
競馬専門紙「競馬ニホン」で調教班として20年以上在籍。本社予想などを担当し、編集部チーフも兼任。現在、サンケイスポーツにて地方競馬を中心に予想・記事を執筆中。競馬ニホンが休刊となってもうすぐ2年。時が経つのは早いなと思いつつ、物忘れと老眼の進行速度の速さにも驚いています。
