【皐月賞】ペースがぴったり合うのはどの馬か?注目は「ホープフルS」と「若葉ステークス」

東森カツヤ

2020年の皐月賞の予想ラップと前哨戦のラップ比較インフォグラフィックⒸSPAIA

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「皐月賞ポジション」という概念

4月19日に中山競馬場で行われるのは皐月賞(GⅠ・芝2000m)。ホープフルSからの直行となるコントレイル、朝日杯からの直行となるサリオスらの人気が予想される一戦だ。

今回の記事では皐月賞を予想する上で大きなヒントとなる前哨戦5レースを振り返る。本番で馬券を買うべき“試運転”ができたのは果たしてどの馬だったのか。

まずその前に、本番の皐月賞自体の傾向にも触れておきたい。

皐月賞の4角通過順別成績

13年以降の7回中、16年を除く6回は全て1~3着が4角7番手以内の馬だった。ディーマジェスティが勝った16年はリオンディーズが暴走したことによるハイペースに加え、最後の直線が強烈な追い風という特殊条件だった。普通の年は最低でも7番手にいないと勝負できないと考えたい。

かつて存在した「ダービーポジション」という概念が死語になったのとは対照的に、皐月賞は近年の馬場整備技術の改善(=連続開催の最終週にもかかわらず、外差し馬場にならない)によって先行有利の傾向が強くなっている。「皐月賞ポジション」という新概念が生まれた。

そして、本番で先行有利の傾向が強まったことで、当然ながら前哨戦でも先行力を見せていた馬が穴をあけるパターンが増えている。先述した13年以降の7回で、6番人気以下で馬券になった6頭のうち5頭は前走で最初のコーナーを5番手以内で回っていた。(例:18年1着エポカドーロ、17年1着アルアインなど)前哨戦の内容から穴を狙うなら「初角5番手以内」だった馬に照準を定めたい。

仮想・皐月賞に最も近い前哨戦は?

中山で行われた過去9回の皐月賞で、各区間の中央値をとって算出した「仮想・皐月賞」のラップタイムは以下の通り。

12.3-10.8-12.0-11.7-12.3-12.1-12.2-11.9-11.7-11.8

特徴としては
1.2ハロン目にある程度激しめの先行争いがある
2.道中の緩みは小さく、そのため最後の加速もなだらか

の2点が大きく挙げられる。これを参照しながら、皐月賞に直結する前哨戦とそうでない前哨戦に仕分けてみる。

結論から書くと、ホープフルS、共同通信杯、弥生賞、スプリングS、若葉Sの5レースで仮想・皐月賞に質が似ていたのはホープフルSと若葉S。全く異なる質だったのは共同通信杯、スプリングS。中間が弥生賞だった。それぞれのレースについて詳しくみていく。

ホープフルSの上位馬はそのまま評価

ホープフルSのレースラップは

12.6-11.5-12.4-12.2-12.2-12.1-12.0-12.0-11.9-12.5

で、先述した皐月賞の特徴を両方満たしている。レースレベルも高い一戦で、ここの上位勢は皐月賞でも信用できる。

1着コントレイルは2番枠から外に誘導する形で3番手。道中は多少行きたがるのを我慢させて、最後の直線は馬なりで先頭に立つと、抜け出してから右に刺さるのを修正するために一発だけステッキを入れた程度で後続を完封。内容としては完勝だが、気性面から距離は2000mがギリギリ上限という印象も受けた。

2着ヴェルトライゼンデはコントレイルをマークする形で追いすがり、上がり最速タイ。今後の逆転が絶対に不可能というほどの圧倒的な差はない。

4着ラインベックは外枠からスムーズに2番手。4角で早々に捕まってしまい、最後までしぶとく食い下がったものの上位勢からは離された。

共同通信杯からはマイラプソディ

共同通信杯のラップは

13.2-11.9-12.5-12.9-12.7-12.1-11.2-11.4-11.7

雨でタフになった馬場を考慮してもかなりのスローペース。皐月賞とは質が程遠いレース。つまり、負けた馬でも言い訳が利くということ。

1着ダーリントンホール、2着ビターエンダーはそれぞれニューアプローチ産駒、オルフェーヴル産駒で道悪適性抜群。かつこれだけのスローなので位置取りの差もモノを言った。

この組で見直したいのは1番人気で4着に敗れたマイラプソディ。後方でどっしりと構え差しあぐねたが、京都2歳Sまでのパフォーマンスは優秀。馬主とのつながりもあるとはいえ、サトノフラッグにも騎乗していた武豊騎手がこちらを選んだことも注目すべき要素。まだ見限れない。

サトノフラッグが強烈な弥生賞

こちらも雨中の一戦となった弥生賞のラップは

12.7-11.4-12.1-12.3-12.6-12.6-12.6-12.5-11.8-12.3。

外差しに振れた馬場状態もあったが、4角大外から抜群の手応えで進出して勝ち切ったサトノフラッグの内容が際立つレースだった。ただ、あのレースぶりは少頭数の弥生賞や直線の長いダービーでは問題なくとも、多頭数で器用な立ち回りが求められる皐月賞の予行演習としてはあまり参考にならない。騎乗予定のルメール騎手がどうアプローチしてくるか見ものだ。

瞬発力勝負になったスプリングS

スプリングSは前哨戦のなかでも特に極端な瞬発力勝負。

12.8-12.1-12.6-13.0-12.7-12.3-11.8-11.1-11.4

で、馬群も一団だったので最後の決め手ひとつで着順が決まったレース。

ガロアクリークは距離短縮のスローに、自慢の末脚が活きる流れ、全てがよく作用した印象。むしろ評価したいのは2着のヴェルトライゼンデ。こちらは賞金的にも皐月賞の出走ボーダーを超えている立場で、あくまでひと叩き。展開のアヤで敗れはしたが、ホープフルSの好走からシビアなペースでも走れることが証明済み。この敗戦で人気を落とすなら皐月賞で馬券的に面白い。

“皐月賞っぽい”ラップになった若葉S

最後に若葉S。勝ち馬アドマイヤビルゴの回避もあって、正直このレースは割愛してもいいかと思ったが、ラップを見ると

12.3-10.6-12.2-12.5-12.3-12.1-11.9-11.5-11.5-11.7

と、皐月賞によく似ている。

アドマイヤビルゴ以外のメンバーレベルが今一つだった印象はあるものの、純粋に適性という観点だけならこのレース2着のキメラヴェリテは不気味な存在といえそうだ。

前哨戦のまとめ

前哨戦回顧からの推奨馬は、コントレイル、ヴェルトライゼンデ、マイラプソディ、キメラヴェリテの4頭。中でも1頭本命を選ぶとすればヴェルトライゼンデか。皐月賞と質の似たホープフルSで好走、叩きかつ極端な瞬発力勝負で参考外の一戦だったスプリングSの敗戦で多少なりとも人気を落とすなら、オッズ的な旨味も出る。

また、本番ではこの5レースとは別の路線、朝日杯から直行のサリオスもいる。「皐月賞はマイラーでも対応可」という言説はよく目にするが、そうはいっても過去10年で1800m以上のレースを経験していない馬は1頭も馬券になっていないのも事実。サリオスの扱いも含めて、日曜日までおうちでゆっくりと頭を悩ませたい。

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