【阪神牝馬S】「ディープインパクト産駒3勝」「スローペース傾向」マイル戦になって変わったことは?

勝木淳

阪神牝馬SデータインフォグラフィックⒸSPAIA

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マイル戦に変更されてからの傾向

ヴィクトリアマイルの前哨戦のひとつ阪神牝馬Sは2016年より内回り1400mから外回りマイル戦へ距離変更された。これによって16年以前よりさらにヴィクトリアマイルに直結するレースとなった。

16年ストレイトガール(阪9着→ヴィ1着)、17年アドマイヤリード(阪2着→ヴィ1着)、3着ジュールポレール(阪3着→ヴィ3着)、18年ジュールポレール(阪5着→ヴィ1着)、リスグラシュー(阪3着→ヴィ2着)、19年クロコスミア(阪5着→ヴィ3着)と阪神牝馬Sから本番で着順を上げる馬が多く、阪神牝馬Sの結果は好走馬に限らず凡走馬まで幅広く抑えおくべきで、最重要チェックレースである。

阪神牝馬S過去10年勝ち馬成績ⒸSPAIA


1400m時代は前半が速い前傾ラップになることが多く、中団から後ろの組の差しも決まっていたが、マイルになった16年以降は前半より後半が速い後傾ラップにシフト、先行馬の活躍が目立つ。スローペースとなれば切れ味勝負に強い馬というイメージだが、それ以上に位置取りがアドバンテージとなっている。とにかく先行馬優位と覚えておきたい。

16年以降の変化とは

前走クラス別成績をみていこう。

前走クラス別成績(過去10年)ⒸSPAIA


前走重賞出走組と比較すると、GⅢ組【3-3-7-51】に対し、3勝クラス【3-3-2-23】、オープン特別組【3-2-0-29】など格下からここに臨む馬が強い傾向がある。上がり馬が強いというのはこのレースの難しさの一端となっていた。ところが、

前走クラス別成績(2016年~19年)ⒸSPAIA


マイル戦になった16年以降は3勝クラスこそ【0-2-1-6】と奮戦しているが、オープン特別【0-0-0-8】と好走例がなくなった。かわってGⅢ【3-1-3-20】、GⅠ【1-1-0-5】の成績が上回った。上がり馬より格上のレースからここへ転戦する馬に注意すべきという傾向に変化している。

大きく変わったといえば種牡馬別成績である。

主な種牡馬別成績(過去10年)ⒸSPAIA

主な種牡馬別成績(2016~19年)ⒸSPAIA


ディープインパクトは過去10年【4-4-2-15】だが、16年以降の3年で【3-2-1-10】、つまり1400m時代の6年間で【1-2-1-5】だからマイルになって急上昇している。ディープインパクト産駒は4年で3勝なので、まずはディープ産駒を確認するところから始めるべきだ。同週の桜花賞をみても阪神マイルはディープインパクト産駒が大得意コース。2回阪神2日目マイル高額レースでディープインパクト産駒は武庫川S1着、六甲Sでは1~3着独占。同産駒の評価は上げるべきであろう。

また1400m時代【1-1-0-7】のダイワメジャー産駒はマイルになってからも【1-1-0-2】と高確率。相反する適性の持ち主なので、ディープインパクト産駒の評価を上げると相対的に下がりがちなダイワメジャー産駒だが、マイル戦はダイワメジャーの得意条件であり、ディープインパクトと共存するレースと考えた方がいい。

レース傾向の変化という意味では前走距離別成績がストレートにあらわれる。

前走距離別成績(過去10年)ⒸSPAIA

前走距離別成績(2016~19年)ⒸSPAIA


1400m時代はひと息で走りきるような同距離である前走1400m【3-3-3-25】が機能していた。ひと溜め利かせる必要があるマイル戦になってもこの組は【1-1-1-7】とそこそこだが、1400m時代より1600m以上の距離から参戦する短縮組の活躍が目立つようになった。1800m【1-1-0-10】2400m【0-1-0-1】2500m【1-0-0-0】といったあたりが今後も数値を伸ばしていきそうな気配がある。

牝馬路線は秋こそエリザベス女王杯を頂点とする中距離路線が主体でここに牡馬中距離路線参戦組が混ざるが、年が明けると一転して春はマイル路線を歩むことになる。このシフトが1400m戦だった阪神牝馬Sでは上手くいかずに格下馬の好走を許していたが、このレースがマイルになったことでそのシフトチェンジが前哨戦から上手くいきはじめている。実績馬を素直に評価すべきレースになったこと、それがこの距離変更によって生じた最大の変化ではないか。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて「築地と競馬と」でグランプリ受賞。中山競馬場のパドックに出没。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌「優駿」にて記事を執筆。

阪神牝馬SデータインフォグラフィックⒸSPAIA

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