【ジャパンC】昨年ワンツーのトニービン内包馬が強い “長距離戦ベスト”の伏兵候補に注目

坂上明大

ジャパンCの傾向と注目血統馬,ⒸSPAIA

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傾向解説

2025年ジャパンカップはタスティエーラ、ダノンデサイル、クロワデュノールという3世代の日本ダービー馬が集結し、今年の欧州年度代表馬カランダガンまで参戦してきました。

血統面でもディープインパクト、キングカメハメハ時代が終わり、種牡馬のラインナップも実にバラエティに富んでいます。本記事では血統面を中心に、ジャパンCのレース傾向を整理していきます。

大前提として把握しておく必要があるのは、東京芝2400mは日本競馬のド真ん中に位置づけられるコースであるということ。

日本競馬が芝1600~2500mを中心に形成されていることはGⅠの数や賞金額からも明白で、特に東京競馬場に代表されるような直線の長いコースが日本の主流コースと呼べる舞台です。

そしてそれは競走馬の生産自体が強い芝中距離馬をつくることをメインテーマにしていることを意味し、層が厚いがゆえに世代交代のスパンが短いこともメインカテゴリーらしい特徴といえるでしょう。

そのため、過去10年のジャパンCでは6歳以上での好走が1度もなく、単勝オッズ30倍以上での好走馬も1頭も出ていません。

6歳以上の成績(過去10年)


<6歳以上>
該当馬【0-0-0-50/50】
勝率0.0%/連対率0.0%/複勝率0.0%/単回収率0%/複回収率0%
※過去10年

単勝オッズ30倍以上の成績(過去10年)


<単勝オッズ30.0倍以上>
該当馬【0-0-0-97/97】
勝率0.0%/連対率0.0%/複勝率0.0%/単回収率0%/複回収率0%
※過去10年

血統面においても日本の主流血統、つまりはサンデーサイレンス系の好成績が目立ちます。世代がさらに進んだ現在においては父系にこだわる必要はありませんが、サンデーサイレンス内包馬が過去10年の好走馬のべ30頭のうち28頭を占めるというデータは、なかなかインパクトがあります。

ただ、馬券的にはトニービンの血に注目。同馬も1994年リーディングサイアーに輝いた主流種牡馬で、東京芝2400m適性はサンデーサイレンスやキングカメハメハ以上と言っても過言ではないでしょう。

2015年17番人気4着ジャングルクルーズ(父ジャングルポケット)や2021年10番人気4着サンレイポケット(父ジャングルポケット)など惜しくも馬券圏内に入れなかった穴馬も多く、昨年もトニービン内包馬のワンツー決着となりました。

トニービン内包馬の成績(過去10年)


<トニービン内包馬>
該当馬【4-3-4-6/17】
勝率23.5%/連対率41.2%/複勝率64.7%/単回収率129%/複回収率121%
※過去10年(5歳以下、単勝オッズ29.9倍以下)

【注目血統馬】

☆マスカレードボール
母母ビハインドザマスクは芝1200~1600m重賞3勝馬。母マスクオフはAlzao≒ダンシングブレーヴの3×3を持つ末脚強化型のディープインパクト産駒で、本馬の7/8同血の姉には秋華賞2着馬マスクトディーヴァ(2023年ローズS、2024年阪神牝馬S)がいます。

本馬はドゥラメンテ×ディープインパクトという主流配合馬で、サンデーサイレンスの3×3から受け継ぐ末脚力と気難しさが特徴です。

リズム良く運べるかが最大のポイントで、末脚を生かしやすい東京コースは得意舞台のひとつでしょう。晩成傾向の強い血統でもあるだけに、クロワデュノールとの逆転があっても何ら不思議はありません。

☆アドマイヤテラ
4代母ウインドインハーヘアに遡る名牝系に属し、母アドマイヤミヤビは2017年オークス3着馬。レイデオロ産駒の本馬はウインドインハーヘアの4×4を持つ点が最大の魅力で、スレンダーでしなやかな馬体にも牝系の良さが表現されています。

友道厩舎という点からも豊富なスタミナが生きる長距離戦が主戦場。トニービンの血を引く馬らしく背中も長めで、芝長距離戦で息の長い末脚を生かす競馬がベストでしょう。

過去10年で最も多くのジャパンC優勝馬を出すハーツクライの血を母父に持つ点も魅力大です。

ジャパンCの傾向と注目血統2頭,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。2023年11月には本島修司氏との共同執筆で『競馬の最高戦略書予想生産性を上げる人の取捨選択の技術』(主婦の友社)を出版。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。

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