単回198%の「逃げ」に要注意、川田将雅騎手はGⅠで驚異の勝率41.7% 阪神芝1600m徹底検証

東大ホースメンクラブ

阪神芝1600mコースデータ,ⒸSPAIA

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桜の女王決定戦の舞台

今週末は阪神芝1600mで牝馬三冠の初戦・桜花賞(GⅠ)が開催される。

今年の牝馬クラシックロードは大混戦。クイーンCを2馬身差で完勝、メジャーエンブレムのレコードを0.3秒更新したエンブロイダリーや、フェアリーSで3馬身差の楽勝、こちらも従来のレコードを0.9秒更新したエリカエクスプレスに、2歳女王アルマヴェローチェなど、桜の女王決定戦に楽しみなメンバーが揃った。

当該コースが舞台の重賞は7レースある。GⅠは桜花賞に加え、暮れの2歳最強マイラー決定戦・朝日杯FSと阪神JFの3つ。GⅡは桜花賞の最重要ステップレースであるチューリップ賞と、古馬の牝馬による阪神牝馬Sの2つ。GⅢはNHKマイルCトライアルのチャーチルダウンズC(昨年まではアーリントンC)、そして今年から新設されるしらさぎSの2つだ。

今回はこの阪神芝1600mコースについて、データを見ながら分析していく。なお、使用するデータは直近5年分、集計期間は2020年4月11日〜2025年4月6日とする。


数々の名牝たちも泣いた大外枠

まずはコースの概要から。阪神芝1600mは2006年の改修によって誕生した外回りコースを使用する。

向正面をスタートして3コーナー手前まで上り、以降4コーナーの途中まではほぼ平坦。残り3ハロンあたりから400m程度の下り坂を迎え、ゴール前の急坂(高低差1.8m)を駆け上がるとゴールが待ち受ける。直線はBコース使用時で476.3mとなっている。


阪神芝1600m・枠別成績,ⒸSPAIA


<阪神芝1600m・枠別成績>
1枠【23-32-40-282】
勝率6.1%/連対率14.6%/複勝率25.2%/単回収率36%/複回収率82%
2枠【38-25-32-294】
勝率9.8%/連対率16.2%/複勝率24.4%/単回収率104%/複回収率78%
3枠【34-36-33-309】
勝率8.3%/連対率17.0%/複勝率25.0%/単回収率90%/複回収率77%
4枠【34-31-29-337】
勝率7.9%/連対率15.1%/複勝率21.8%/単回収率77%/複回収率65%
5枠【35-29-25-355】
勝率7.9%/連対率14.4%/複勝率20.0%/単回収率88%/複回収率58%
6枠【33-40-37-361】
勝率7.0%/連対率15.5%/複勝率23.4%/単回収率47%/複回収率88%
7枠【37-37-42-439】
勝率6.7%/連対率13.3%/複勝率20.9%/単回収率98%/複回収率83%
8枠【36-38-31-493】
勝率6.0%/連対率12.4%/複勝率17.6%/単回収率37%/複回収率60%
※集計期間:2020年4月11日〜2025年4月6日

まずは枠順別成績について。1〜4枠が複勝率24.1%、複回収率75%に対して、5〜8枠は複勝率20.3%、複回収率72%となっており、好走率・妙味ともに内枠が優勢だ。

桜花賞でもこの傾向は一貫していて、過去にもスターズオンアース(4枠8番/7人気1着)、ナムラクレア(1枠1番/6人気3着)、ファインルージュ(1枠2番/8人気3着)、スマイルカナ(2枠3番/9人気3着)と内枠から人気薄が激走している。

一方、大外の8枠は全ての枠の中で唯一複勝率20%を下回っているように苦戦が目立つ。過去にもチェルヴィニア(8枠18番/4人気13着)やナミュール(8枠18番/1人気10着)など、後にGⅠを制する名牝たちも大外枠に泣かされてきた。今年も内枠に入った馬は評価を上げ、大外枠に入った馬は大きく割り引く必要がありそうだ。


阪神芝1600m・脚質別成績,ⒸSPAIA


<阪神芝1600m・脚質別成績>
逃げ【39-17-30-183】
勝率14.5%/連対率20.8%/複勝率32.0%/単回収率198%/複回収率130%
先行【107-112-98-686】
勝率10.7%/連対率21.8%/複勝率31.6%/単回収率77%/複回収率92%
差し【95-102-101-1064】
勝率7.0%/連対率14.5%/複勝率21.9%/単回収率73%/複回収率73%
追込【29-35-40-932】
勝率2.8%/連対率6.2%/複勝率10.0%/単回収率31%/複回収率41%
※集計期間:2020年4月11日〜2025年4月6日

次に脚質別成績をみる。最終直線が400mを超える長さであるため、他のコースと比べてまずまず差しが決まりはするが、全体成績はセオリー通り前有利だ。

特に逃げ馬は複勝率32.0%で、単複回収率も100%を超えている。長い最終直線を意識するあまり、逃げ・先行馬の評価を下げすぎないようにしたい。

今週の桜花賞では前走で逃げてきた馬がおらず、メンバーから逃げ馬を推測することも困難だったが、ランフォーヴァウの回避によってミストレスに出走枠が回ってきたのはポイントになりそう。直近2戦は地方と海外でダートに挑戦したが、もともとデビューから3戦連続で芝1600mを走り、新潟の新馬戦は逃げ切り圧勝。次走は東京のアルテミスS(GⅢ)でも逃げて2着に粘り込んだ。

デビュー3戦目で挑んだGⅠ・阪神JFでも、7番枠からスムーズにハナを主張。結果は8着に敗れているが、安定した先行力の持ち主だけに、展開のカギを握る一頭として注目だ。


キズナ産駒は特定条件で強さ発揮

阪神芝1600m・種牡馬別成績,ⒸSPAIA


<阪神芝1600m・種牡馬別成績>
ロードカナロア【18-24-21-167】
勝率7.8%/連対率18.3%/複勝率27.4%/単回収率36%/複回収率87%
ルーラーシップ【18-9-9-97】
勝率13.5%/連対率20.3%/複勝率27.1%/単回収率97%/複回収率85%
キズナ【15-14-13-119】
勝率9.3%/連対率18.0%/複勝率26.1%/単回収率95%/複回収率118%
※集計期間:2020年4月12日〜2025年4月6日

■ロードカナロア
全体成績では単回収率こそ36%と低めだが、複回収率は87%と悪くない。紐で積極的に拾っていきたい種牡馬だ。

狙い目は前走でマイル以上の距離を走っていた馬。該当馬は【14-15-16-92】複勝率32.8%、複回収率も102%となる。一方、前走から距離延長だと複勝率16.3%と好走率が落ちる点は注意したい。

■ルーラーシップ
こちらも全体成績で単回収率97%、複回収率85%と妙味の面ではまずまず優秀。特徴としては、良馬場では単系馬券、重馬場では連系馬券と狙い目が分かれること。

良馬場だと【13-4-7-65】勝率14.6%、単回収率124%と単の妙味あり。対して、重馬場では【0-3-0-4】複勝率42.9%、複回収率168%と勝ち切れないものの馬連や3連系の馬券を組むうえでは非常に優秀だ。ちなみに、稍重では単回収率53%、複回収率71%と良馬場や重馬場の時に比べて妙味が薄くなる。

■キズナ
全体成績でも複回収率118%と、このコースではベタ買いでもプラス域。なかでもリステッド競走に強く、【3-1-0-3】勝率42.9%、単回収率820%と驚異的な数値を記録している。

また、新馬戦にも強く【3-2-3-15】勝率13.0%、単回収率208%となっている。ただし、重賞では【0-0-4-25】複勝率13.8%、複回収率39%と成績が急落している点には注意したい。

なお、桜花賞に出走を予定している上記3頭の産駒は下記の通り。

<ロードカナロア産駒>
・ダンツエラン
・チェルビアット

<キズナ産駒>
・ショウナンザナドゥ
・ブラウンラチェット

今回ルーラーシップ産駒の登録はなし。なお、エンブロイダリーやナムラクララが該当するアドマイヤマーズ産駒は【0-0-0-2】でサンプル数は少ないが馬券に絡んだことがなく、エリカエクスプレスが該当するエピファネイア産駒は【15-17-19-134】複勝率27.6%、複回収率90%となっている。


「複勝率54.5%」驚異の安定感誇る川田将雅

阪神芝1600m・騎手別成績,ⒸSPAIA


<阪神芝1600m・騎手別成績>
川田将雅【30-10-15-46】
勝率29.7%/連対率39.6%/複勝率54.5%/単回収率108%/複回収率83%
岩田望来【16-16-15-108】
勝率10.3%/連対率20.6%/複勝率30.3%/単回収率49%/複回収率120%
武豊【13-19-6-72】
勝率11.8%/連対率29.1%/複勝率34.5%/単回収率88%/複回収率80%
※集計期間:2020年4月12日〜2025年4月6日

■川田将雅騎手
複勝率54.5%という圧倒的な安定感を誇り、単回収率は108%とプラス域。迷ったら川田騎手から買っておけば間違いない、という成績だ。

なかでもGⅠでは【5-1-2-4】勝率41.7%、単回収率324%と素晴らしい成績を誇る。桜花賞では2022年に7人気スターズオンアースを勝利に導いており、伏兵とのコンビでも目が離せない。

■岩田望来騎手
全体成績でも複勝率30.3%、複回収率120%と馬券内という観点では安定感と妙味のバランスが良く、紐で積極的に拾っていきたい騎手だ。

特に内枠からロスなく立ち回る競馬を得意としており、1〜4枠に入った際は【9-7-8-36】複勝率40.0%、複回収率143%と非常に優秀な成績となる。

■武豊騎手
今年のチューリップ賞ではウォーターガーベラで華麗なイン突きを決め、勝利まであと一歩の2着に導く名騎乗を見せたのが記憶に新しい。

特徴的なのが逃げ・先行【6-11-3-17】複勝率54.1%、複回収率119%と、上述した印象的なレースとは反して前に付けた時の好成績が光る。前走で逃げていた馬とのコンビでも【1-3-0-4】複勝率50.0%、複勝率125%と妙味十分だ。

<桜花賞の騎乗予定>
・川田将雅騎手=ボンヌソワレ
・岩田望来騎手=アルマヴェローチェ
・武豊騎手=ウォーターガーベラ

なお、エンブロイダリーに騎乗予定のJ.モレイラ騎手は【3-0-0-4】勝率42.9%、単回収率131%の好成績。昨年は阪神牝馬Sをマスクトディーヴァ、桜花賞はステレンボッシュ、アーリントンCはディスペランツァで制し、2週間でこのコースの重賞を3勝する離れ業をやってのけた。

また、エリカエクスプレスに騎乗予定の戸崎圭太騎手は【2-0-1-13】。勝率12.5%も、過去に13番人気・単勝142.9倍での勝利があり、単回収率は928%となっている。


阪神芝1600m・コースデータ,ⒸSPAIA


《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開中。新歓情報はTwitterにて更新(@ut_horsemen)。

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