持久力試される舞台はディープボンド強し! キズナ産駒の「買える条件・買えない条件」

東大ホースメンクラブ

2022年キズナ産駒「買える・買えない条件」,ⒸSPAIA

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主役は譲れないディープボンド

今週日曜、阪神競馬場でGⅡ・阪神大賞典が行われる。最強ステイヤー決定戦、GⅠ・天皇賞(春)へつながる歴史と伝統のステップレース。万葉Sを格上挑戦で制した勢いでスターダムへ駆け上がりたいマカオンドール、同レース2年連続連対の古豪ユーキャンスマイル、ステイヤーズS2着アイアンバローズなど、現役屈指のタフネスを誇る14頭が集結する。

主役はディープボンドを置いて他にいない。昨年は仏GⅡフォワ賞制覇、暮れの有馬記念2着など確かな存在感を放ったいぶし銀の5歳馬だ。今回は同レース連覇へ、ワールドプレミアにわずか3/4馬身差で届かなかった盾獲りへ落とせない一戦となる。

同馬の父はキズナ。ディープインパクトの子にしてダービー馬、父から受け継いだ末脚を武器に日仏で活躍しファンに夢を与えたスターホースだ。今週はキズナ産駒の戦績を概観しつつ、馬券で狙える条件、狙えない条件を調査していく(データは2019年以降)。

キズナ産駒・獲得賞金ランキング,ⒸSPAIA


まずはキズナ産駒のここまでの蹄跡を振り返ってみよう。

2019年に産駒デビュー。7月にはいきなりビアンフェが函館2歳Sを制し、産駒の重賞初出走でタイトルを獲得、幸先のいいスタートを切った。現役時代からしのぎを削り、ファーストシーズンから三冠牝馬デアリングタクトをターフに放ったエピファネイアには後れを取ったものの、その後も阪神JF2着からチューリップ賞を制したマルターズディオサ、父同様に京都新聞杯を勝ったディープボンドなど数々のタレントを送り込んだ。

GⅠではマルターズディオサの阪神JF以降長らく馬券圏外が続いたものの、昨年の桜花賞でファインルージュが8番人気ながら3着に奮闘したのを皮切りに、天皇賞(春)2着のディープボンド、NHKマイルC2着のソングライン、オークスで16番人気を覆し3着に入ったハギノピリナが春のビッグレースを盛り上げた。そして秋のエリザベス女王杯でアカイイトのマクり差しが炸裂し、なかなか手が届かなかったGⅠタイトルをついに手に入れた。

現時点での産駒獲得賞金ランキング(JRAのみ)トップはディープボンド。同馬主コントレイルが三冠をかっさらう中、ズブいが追えばどこまでも伸びる、自分にできる走りを愚直に続けた同馬は、昨年の阪神大賞典を楽勝すると天皇賞(春)2着、秋にはフランスでフォワ賞に勝ち凱旋門賞挑戦、帰国ぶっつけの有馬記念では現役最強エフフォーリアを必死に追いかけ2着に入った。

2位は孝行娘アカイイト、3位には重賞2勝のマルターズディオサがランクイン。4位は牝馬三冠で頑張ったファインルージュ、5位にビアンフェが続く。2歳時から結果を残しつつも「早枯れ」の産駒が少なく、幅広いジャンルで活躍馬を輩出している。

さすがはスターの子どもたち、重賞◎

キズナ産駒を「買える条件」,ⒸSPAIA


<キズナ産駒を「買える条件」>
500kg以上:勝率13.3%/連対率23.2%/複勝率34.9%/単勝回収率121%
芝重賞:勝率8.7%/連対率15.6%/複勝率24.9%/単勝回収率154%
阪神:勝率13.3%/連対率23.4%/複勝率33.3%/単勝回収率113%

次に回収率の高い「買える条件」についてチェックする。

まずは何よりもデカい馬を買いたい。キズナ自身の全盛期は480kg台だったが、500kg以上では3頭に1頭以上が馬券に絡み、妙味も十分。ムラのある走りが続いていたアカイイトも500kgの大台を超えて維持するようになり成績が安定、GⅠを獲ってみせた。馬格のある産駒は早いうちから注目しておきたい。

クラス別成績ではスターの子どもたちらしく、重賞での回収率が高い。ダートにはほぼ出走がないが(【0-0-1-5】)、芝では単勝回収率150%を超えている。うち左回りの重賞では【1-3-8-58】複勝率17.1%、単勝回収率5%しかないが、右回りでは【14-9-8-72】複勝率30.1%、単勝回収率255%を記録。ダービーのイメージに引きずられないようにしたい。

競馬場別で最も得意にしているのは阪神。基本的に芝、ダートを問わないが、芝のマイル以上で単勝回収率162%を叩き出している。該当条件では前走掲示板を外した馬も【13-9-7-79】複勝率26.9%と巻き返し、単勝回収率は300%近い。キズナが毎日杯で覚醒し、産経大阪杯でエピファネイア以下を完封した舞台で輝いている。

小回りでは持ち味生かせず

キズナ産駒を「買えない条件」,ⒸSPAIA


<キズナ産駒を「買えない条件」>
東京ダート:勝率9.1%/連対率15.4%/複勝率21.7%/単勝回収率58%
福島・小倉:勝率7.7%/連対率16.0%/複勝率23.9%/単勝回収率37%

最後に「買えない条件」をピックアップ。

芝に比べるとダートでは上級条件で戦える産駒が非常に少ないが、特に厳しいのは東京。2100mでは【4-4-4-27】複勝率30.8%と健闘も、その他の距離では好走率も回収率も芳しくない。人気を集めていても軽視したい。

豪脚一閃系の馬が向かない条件といえば小回りも同じで、福島と小倉ではかなりの苦戦を強いられている。前走左回りだった馬に限定すると単勝回収率は26%まで低下し、差し脚を存分に伸ばせる条件からの暗転が目立つ。評価を下げるのが得策だろう。

《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開中。

2022年キズナ産駒「買える・買えない条件」,ⒸSPAIA


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