【七夕賞】クレッシェンドラヴの優位は揺るがない 東大HCが福島芝2000mを徹底検証
東大ホースメンクラブ
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コース紹介
今週は福島芝2000mを舞台に、サマー2000シリーズ開幕戦・GⅢ七夕賞が行われる。昨年の覇者、広尾レースホースを代表する古豪クレッシェンドラヴを筆頭に、逃げの手で安田記念5着に健闘したトーラスジェミニ、福島を愛し、福島に愛された馬ヴァンケドミンゴなどが今年の一番星を目指してみちのくのターフを駆ける。
当該コースが舞台の重賞は2レース。七夕賞の他、香港GⅠ馬ウインブライトなどが出世街道に乗ったGⅢ福島記念が施行される。今週はローカル名物競走の舞台となるこのコースの特徴をデータで分析していく(使用するデータは2016年7月9日〜2021年7月4日)。
まずはコース紹介。直線のポケット地点をスタートして芝コースをぐるりと一周する形態で、最初のコーナーまでは約505mと長め。直線から向こう正面にかけて細かなアップダウンが続く。その後4コーナーまでは平坦な道のりを進み、残り400mから高低差1m程度の下り→上りで雌雄を決する。最後の直線距離はAコース使用時で292mとなっている。
追込馬「509戦0勝」の衝撃
<福島芝2000m・過去5年の枠別成績>
1枠【17-11-11-139】勝率9.6%/連対率15.7%/複勝率21.9%
2枠【12-11-10-158】勝率6.3%/連対率12.0%/複勝率17.3%
3枠【14-12-11-165】勝率6.9%/連対率12.9%/複勝率18.3%
4枠【10-16-15-168】勝率4.8%/連対率12.4%/複勝率19.6%
5枠【18-18-17-162】勝率8.4%/連対率16.7%/複勝率24.7%
6枠【16-20-19-173】勝率7.0%/連対率15.8%/複勝率24.1%
7枠【16-13-20-183】勝率6.9%/連対率12.5%/複勝率21.1%
8枠【16-18-16-188】勝率6.7%/連対率14.3%/複勝率21.0%
複勝率ベースでは中枠がやや優秀だが、勝率は1枠がトップ。小回りコースとあって内めをするするとロスなく運べる馬が最後の直線まで力を温存できる。過去5年のGⅢ10レースでは1・2枠が5勝を挙げており、昨年の七夕賞クレッシェンドラヴ・福島記念バイオスパークはいずれも2枠3番だった。当日の馬場状態との相談にはなるが、基本的に内枠はマークが必要だろう。
対照的に気を付けたいのが全体成績ではさほど悪くない外枠。7・8枠は同10レースで【0-5-1-34】と連対こそあれ勝利がなく、人気馬でも2・3着に固定するなど、少しの工夫で馬券妙味を高めることができる。また8番人気以下だと【0-0-0-26】と全滅、掲示板を確保した馬も2頭しかいないため、よほど自信のある穴馬でない限り買い控えるのが得策だ。
<福島芝2000m・過去5年の脚質別成績>
逃げ【15-12-12-89】勝率11.7%/連対率21.1%/複勝率30.5%
先行【61-49-40-243】勝率15.5%/連対率28.0%/複勝率38.2%
差し【32-39-48-495】勝率5.2%/連対率11.6%/複勝率19.4%
追込【0-13-8-488】勝率0.0%/連対率2.6%/複勝率4.1%
脚質別成績では逃げよりも先行の活躍が目立つ。小回りコースにしては押し切りが難しく、最後の坂で後続につかまりやすい。中山で4度の逃げ切りがあるトーラスジェミニが福島とのリンクを考慮されて上位人気に推されそうだが、単系の馬券は信頼度に乏しい。むしろ同馬を見る位置でレースを進める馬を狙いたいところ。
また後方待機勢が基本的に厳しいという点も頭に入れておきたい。特に追込馬はのべ509頭が走って1勝もできておらず、4コーナーの時点で後手に回っている馬は一銭もいらない。ただ差し馬は七夕賞で2度の連対経験のあるクレッシェンドラヴなど、上級条件では通用する素地を残しており、しぶとい末脚を持つタイプは要警戒。
内田博幸の剛腕が唸る夏
<福島芝2000m・過去5年の種牡馬別成績>
ステイゴールド【11-9-7-76】勝率10.7%/連対率19.4%/複勝率26.2%
ルーラーシップ【10-6-9-40】勝率15.4%/連対率24.6%/複勝率38.5%
ハーツクライ【9-8-9-71】勝率9.3%/連対率17.5%/複勝率26.8%
キングカメハメハ【1-7-1-31】勝率2.5%/連対率20.0%/複勝率22.5%
種牡馬別成績ではこの手のコースのスペシャリストらしくステイゴールドが勝利数トップ。2019年の福島記念ではクレッシェンドラヴ・ステイフーリッシュで産駒ワンツーを決めるなど、GⅢでも6番人気以内で【4-2-0-3】連対率66.7%と相性がとことん良い。これまで福島で荒稼ぎしてきたクレッシェンドラヴはやはり別格の存在だろう。
そのステイゴールドに勝利数で迫り、複勝率では実に4割近いハイアベレージを記録しているのがルーラーシップ産駒。七夕賞に出走するヴァンケドミンゴが全4勝を福島で挙げているのも、さもありなんといった印象。上位人気の中ではこの2頭に全幅の信頼を置きたい。
一方、気を付けたいのはハーツクライ産駒。全体成績は悪くないものの、クラス別で見ると1勝クラス以下【9-6-8-55】2勝クラス以上【0-2-1-16】とくっきり明暗が分かれる。2勝クラス以上で好走した3頭はいずれも4角2番手以内につけており、七夕賞に出走する産駒には該当しそうな馬がいない。ワーケアなど全頭をばっさり切って馬券の純度を高めよう。その他キングカメハメハ産駒は1勝にとどまるが2着の多さが目を引き、馬券的には工夫のしようがある面白い存在だ。
<福島芝2000m・過去5年の騎手別成績>
内田博幸【6-4-8-18】勝率16.7%/連対率27.8%/複勝率50.0%
戸崎圭太【10-4-3-24】勝率24.4%/連対率34.1%/複勝率41.5%
酒井学【2-2-1-6】勝率18.2%/連対率36.4%/複勝率45.5%
吉田隼人【4-4-3-32】勝率9.3%/連対率18.6%/複勝率25.6%
騎手別成績では剛腕・内田博幸騎手が堂々の数字。複勝率5割の大威張りで、継続騎乗かつ4番人気以内に限ると【4-2-2-2】複勝率80.0%というとてつもない成績だ。該当条件では目下6戦連続で馬券圏内を続けており、やはりクレッシェンドラヴの優位は揺るがない。
内田博幸騎手をしのぐ10勝を挙げている戸崎圭太騎手はアルバートドック・ゼーヴィントで七夕賞を連覇しており、騎乗馬を確実に好走させるイメージが強い。今回は逃げ馬トーラスジェミニとのコンビで参戦するため、前述のデータとあわせて2・3着付けが得策か。
騎乗回数こそ11回とあまり多くないものの、上位2人と遜色ない安定感を持つのが酒井学騎手。毎年のようにローカル重賞で存在感をアピールするジョッキーらしく、こういった舞台で頼れる男だ。福島巧者ヴァンケドミンゴと3度このコースを走り【1-1-1-0】、念願の重賞タイトルは目の前にある。
なお吉田隼人騎手は前走5着以下の馬で【0-2-1-21】と振るわない。前走鳴尾記念7着だったクラージュゲリエはこれに該当するため、データ上は推奨が難しい。近年ブレイクして関東のトップジョッキーとしての地歩を固めつつあるが、人気するならばむしろ消したいところだ。
《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開中。
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