【秋華賞】デアリングタクトなどのエピファネイア産駒を止めるのはキズナ産駒 東大HCが京都芝2000mを徹底分析
東大ホースメンクラブ
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京都芝2000mの概要
今週は京都芝2000mを舞台に牝馬クラシック最終戦、秋華賞が行われる。このコースを舞台とする重賞は秋華賞のほかに、幾多の名馬を生み出した登竜門・GⅢ京都2歳Sがあるものの、今年は阪神開催。京都競馬場改修前としては秋華賞が最後の重賞となる。この京都芝2000mの特徴を過去のデータから分析していく(使用するデータは2015年10月17日〜2020年5月30日)。
まずはコース概要。京都内回りをぐるっと1周する形態で、ゴール板から200mと少し手前の地点をスタート。向正面半ばまで平坦な道のりを進んでいき、ここから3コーナーまで高低差3.1メートルの「淀の坂」を上って4コーナーで一気に下る。内回りの特性上、コーナーの角度がきついこともあり、ペース配分と立ち回りの妙において騎手の腕が試される。最後に待つ330mの直線での明暗を分けるキーポイントといえよう。
「戦術の幅」がある4枠
<枠別成績>
1枠【24-20-22-197】勝率9.1%/連対率16.7%/複勝率25.1%
2枠【21-22-27-210】勝率7.5%/連対率15.4%/複勝率25.0%
3枠【23-25-28-214】勝率7.9%/連対率16.6%/複勝率26.2%
4枠【33-30-26-221】勝率10.6%/連対率20.3%/複勝率28.7%
5枠【23-30-30-250】勝率6.9%/連対率15.9%/複勝率24.9%
6枠【28-27-31-262】勝率8.0%/連対率15.8%/複勝率24.7%
7枠【37-34-29-288】勝率9.5%/連対率18.3%/複勝率25.8%
8枠【36-38-31-310】勝率8.7%/連対率17.8%/複勝率25.3%
枠別成績では、ほぼ全ての枠が複勝率25%近辺。フェアなコース形態がうかがえるが、勝率・連対率・複勝率全てで首位に君臨しているのが4枠。真ん中の枠の利点は先述したキーポイントとなる坂での戦術の幅が広いことで、進路取りの致命的なミスが生じにくいことだろう。単勝回収率も126%と優秀な数値。近4年の秋華賞でも4枠からヴィブロス・リスグラシュー・カレンブーケドールの3頭が連対している。
ちなみに、秋華賞に限定すると5枠が2006年以降2頭しか馬券になっておらず(10年2着アニメイトバイオ・15年2着クイーンズリング)、点数を絞りたい場合はここから買い目を削るとよい。
<脚質別成績>
逃げ【48-30-21-138】勝率20.3%/連対率32.9%/複勝率41.8%
先行【95-96-82-480】勝率12.6%/連対率25.4%/複勝率36.3%
差し【55-71-72-633】勝率6.6%/連対率15.2%/複勝率23.8%
追込【16-25-45-676】勝率2.1%/連対率5.4%/複勝率11.3%
脚質別成績では逃げの複勝率が4割を超えており、前走で4角先頭だった馬を全頭買うだけでも単勝回収率は125%に達する。次いで成績のいい先行も十分強調できる数字で、基本的に前のアドバンテージを意識して馬券を組み立てるのが賢い戦略だ。
ただし秋華賞に限定すると話は別で、過去24回を数える同レースで逃げ切りは一度もなく、全体の7割強にあたる17勝を差し・追込勢が挙げている(最後に先行で秋華賞を勝ったのは11年アヴェンチュラ)。キレ味勝負が最近のトレンドだ。前走上がり最速をマークした馬の単勝回収率は137%と秀逸。デアリングタクトはもちろん、オークスで同馬から0.2秒差の3着に頑張ったウインマイティーの大金星も夢ではない。
エピファネイア産駒を阻むのはキズナ
<種牡馬別成績>
ディープインパクト【40-43-30-153】勝率15.0%/連対率31.2%/複勝率42.5%
ハービンジャー【26-16-24-110】勝率14.8%/連対率23.9%/複勝率37.5%
キズナ【6-2-4-21】勝率18.2%/連対率24.2%/複勝率36.4%
スクリーンヒーロー【1-2-4-25】勝率3.1%/連対率9.4%/複勝率21.9%
種牡馬別成績ではディープインパクトの複勝率42.5%が目を引く。秋華賞でも、産駒が出走した5レースのうち4レースで連対を果たしている。8番人気以下はこのコースで【0-0-0-39】と全滅しているデータを考慮すると、狙いは人気サイドの産駒。ローズSで復活の勝利を挙げたリアアメリアと、差しに回した桜花賞5着、オークス7着と善戦したミヤマザクラあたりが浮上してくるか。
ディープ亡き後の京都を席巻しそうなハービンジャーに加え、新興勢力からはキズナを推奨。キズナ産駒は平均人気5.9を上回る、平均着順5.2。好相性を裏付けるように、複勝回収率は203%という血湧き肉躍る数字だ。
エピファネイア産駒デアリングタクトの三冠を、現役時代しのぎを削ったキズナ産駒が阻止するようなことがあれば、筋書きを超える血統のドラマになる。紫苑Sを快勝した実績馬マルターズディオサほか、アブレイズ、ダンツエリーゼ、フィオリキアリ)が虎視眈々と最後の一冠を狙う。その他の種牡馬だと、エピファネイアは【2-3-1-12】複勝率33.3%。また、オークス2着馬ウインマリリンの父スクリーンヒーローは好走率・回収率ともに低調である点を覚えておきたい。
<騎手別成績>
ルメール【21-15-8-29】勝率28.8%/連対率49.3%/複勝率60.3%
川田将雅【17-20-16-51】勝率16.3%/連対率35.6%/複勝率51.0%
福永祐一【13-10-10-37】勝率18.6%/連対率32.9%/複勝率47.1%
松山弘平【2-10-4-100】勝率1.7%/連対率10.3%/複勝率13.8%
騎手別成績ではルメール騎手が複勝率トップも、2018年5回開催以降は【2-1-1-12】複勝率25.0%。騎乗馬の質を考えれば芳しくない結果が続いており、額面通りの評価は難しい。
対照的に、川田騎手は2019年1回開催以降【5-11-3-8】複勝率70.4%と素晴らしい騎乗ぶりを披露。さらに上がり2位以内で走破した馬に限ると【4-7-3-0】とパーフェクトだ。前走4コーナー2番手から王道の競馬をしたリアアメリアに騎乗するが、この馬はもともとアルテミスSで鬼脚を披露したキレ味自慢。該当する可能性は十二分にある。ミヤマザクラに騎乗する福永騎手も好相性で、ヴィブロス以来4年ぶりの戴冠へ腕をぶしていることだろう。
心配なのは大本命馬デアリングタクトに騎乗する松山騎手の成績がかなり悪い点。人気馬への騎乗も少なくないにもかかわらず、116回の騎乗で2勝にとどまっている。さらに前走4角7番手以下では【0-1-0-37】複勝率2.6%。桜花賞・オークスで見せた世代屈指のパフォーマンスは疑う余地もないが、データではとても買えない数字が並ぶ。穴党の方は断然人気に逆らえるチャンスだ。
11年前の忘れ物を取りに
<調教師別成績>
藤原英昭【6-10-2-12】勝率20.0%/連対率53.3%/複勝率60.0%
池江泰寿【17-9-1-24】勝率33.3%/連対率51.0%/複勝率52.9%
中内田充正【5-6-2-15】勝率17.9%/連対率39.3%/複勝率46.4%
杉山晴紀【3-0-2-22】勝率11.1%/連対率11.1%/複勝率18.5%
秋華賞に管理馬が出走する主な調教師の成績を見ると、藤原英昭調教師が堂々の複勝率6割をマーク。前走から中10週以上のゆとりローテで臨む馬では【3-4-0-1】連対率87.5%にまで跳ね上がる。クイーンC覇者ミヤマザクラが、11年前にブロードストリートが惜しくも届かなかった(3着入線・繰り上げ2着)GⅠタイトルに挑む。橙色が映える秋の京都に白の深山桜を咲かせることができるか注目だ。
池江泰寿調教師も17勝と勝ち切っている他、過半数の出走馬を連対に導いている。また、クラヴァシュドール・リアアメリアの2頭出しとなる中内田充正調教師はご存じのとおり川田騎手とのコンビで堅実な走りを続けている。気になるデアリングタクトの杉山晴紀調教師は【3-0-2-22】とまずまずの結果だ。
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