【日経賞】激突、タイトルホルダーvsアスクビクターモア! ポイントはペースにあり

勝木淳

日経賞インフォグラフィック,ⒸSPAIA

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年齢傾向ではアスクビクターモア

今年の日経賞はタイトルホルダーとアスクビクターモアの菊花賞馬が激突する豪華な前哨戦になる。1986年以降、前走で菊花賞を勝った馬の参戦は意外にもアスクビクターモアがはじめて。タイトルホルダーが菊花賞直後に有馬記念に向かったように、時期や条件的に菊花賞馬は有馬記念へ参戦するケースが多く、日経賞まで出走しなかったことはない。

アスクビクターモアも当初は有馬記念参戦を視野に入れていたが、万全の状態で出走できないことを理由に回避。私は有馬記念の取材に向かうべく常磐線に乗り換える直前、新松戸で一報に接した記憶がある。あれから3カ月。じっくり立て直してきたアスクビクターモアとタイトルホルダーの力関係はどうなのか。早くも気になって仕方ない。データは過去10年分を使用する。

過去10年日経賞人気別成績,ⒸSPAIA


中山芝2500mは遅い流れならば中距離型、ハイペースなら長距離型に分がある展開次第のコース。条件戦では紛れも多く見られるが、日経賞となると話は別のようで、1番人気【4-3-0-3】勝率40.0%、複勝率70.0%を筆頭に4番人気【3-1-2-4】勝率30.0%、複勝率60.0%までが好成績。とはいえ、過去にはグラスワンダーやマンハッタンカフェが断然人気で敗れ、最低人気のテンジンショウグンが勝利したレースでもある。最近は単勝から荒れることはないが、7番人気【0-2-1-7】複勝率30.0%など2、3着が狂うケースはある。

過去10年日経賞年齢別成績,ⒸSPAIA


年齢は4歳【6-5-1-15】勝率22.2%、複勝率44.4%、5歳【2-2-4-26】勝率5.9%、複勝率23.5%、6歳【2-2-2-31】勝率5.4%、複勝率16.2%、7歳以上【0-1-3-35】複勝率10.3%で若い組が優勢。特に4歳が抜けていて、年齢の傾向ではアスクビクターモアとなる。


前走有馬記念6着以下は勝利なし

ここからは前走傾向を中心にどちらがデータ上、優勢なのかを含め、好走候補を探っていく。

過去10年日経賞前走クラス別成績,ⒸSPAIA


中心はやはり前走GⅠ【4-5-3-13】勝率16.0%、複勝率48.0%。レース内訳でみると、有馬記念【3-3-3-8】勝率17.6%、複勝率52.9%、菊花賞【0-1-0-1】複勝率50.0%。冒頭で指摘した通り、菊花賞からの直行は少なく、どちらも菊花賞2着馬で、19年エタリオウ2着、先日亡くなったサウンズオブアースが15年4着だった。一方、タイトルホルダー、ボッケリーニの有馬記念は5着以内【3-2-2-2】、6着以下【0-1-1-6】なので、9、11着だった2頭は飛びつけない。タイトルホルダーは昨年同じローテでここを勝ったが、有馬記念5着で好走データに合致していた。9着と見せ場がなかった今年はどうだろうか。なおライラックの前走エリザベス女王杯は出走がない。

過去10年日経賞前走GⅡ組レース別成績,ⒸSPAIA


次に前走GⅡ【5-4-5-49】勝率7.9%、複勝率22.2%について。内訳はアリストテレスが当てはまるAJCCが【2-2-2-16】勝率9.1%、複勝率27.3%。こちらは5着以内【1-2-1-7】、6着以下【1-0-1-9】なので、7着アリストテレスは微妙なところだ。

京都記念は【0-1-0-8】複勝率11.1%。ここは4着キングオブドラゴン、12着マイネルファンロンが該当する。13年2着カポーティスターは京都記念6着から巻き返した。タイトルホルダー、アスクビクターモアと強力な先行型がいるので、キングオブドラゴンはどこまで食い下がれるかだろう。ディアスティマの前走ステイヤーズSは【0-0-1-2】複勝率33.3%。15年ホッコーブレーヴが前走5着から3着に好走した。

タイトルホルダーは強気な逃げを打つのか

さて、タイトルホルダーとアスクビクターモアの力関係だが、まず格でいえばGⅠ・3勝タイトルホルダーが上だ。昨年の宝塚記念2:09.7は前半1000m57.6、後半1000m1:00.0でスピード+スタミナの総合力を証明した究極の競馬だった。仏遠征後の状態がどこまで昨春のデキに戻っているか、そこはなんとも判断できない。

2頭の関係でいえば展開もポイントだ。アスクビクターモアが逃げたのは皐月賞1戦だけで、日本ダービーも菊花賞も行きたい馬を行かせ、2、3番手からの競馬で結果を残してきた。タイトルホルダーはパンサラッサが逃げた宝塚記念を除けば、菊花賞も天皇賞(春)も前走有馬記念も逃げており、逃げへの意識はこちらが強い。

タイトルホルダーが逃げ、背後にアスクビクターモアがつけるという展開になったとき、どれほどのペースでレースが進むのか。ここはしっかり推理したいポイントになる。タイトルホルダーが有馬記念のような遅めの流れを演出すれば、アスクビクターモアは早めに動いてとらえにいくだろう。逆に厳しい流れのときは、アスクビクターモアはどこまでスタミナを発揮できるのか。菊花賞で同馬が先頭に立った後半400mは12.2-12.9で、最後はボルドグフーシュに迫られ、ハナ差しのいだ。スタミナ勝負ならタイトルホルダーに分があるのではないか。この辺はやはり流れひとつで問われる適性が変わる。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『テイエムオペラオー伝説 世紀末覇王とライバルたち』『競馬 伝説の名勝負 GⅠベストレース』(星海社新書)に寄稿。

日経賞インフォグラフィック2,ⒸSPAIA



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