【七夕賞】ベテランらしい好騎乗!内田博幸騎手前後半イーブンの厳しい攻防とは?

勝木淳

2020年七夕賞の位置取りⒸSPAIA

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外から内へ。巧みすぎる進路どり

冬の京都、小倉にはじまり春の中山、6月の東京、阪神そして夏の福島と今年は馬場にとって試練が続く。週末の悪天候に限らずとにかく雨が多い年であり、土ぼこりが舞う固い馬場より芝の塊が飛び交う軟弱馬場が続く。馬場整備の技術向上によりこの程度で済んでいるともいえるが、毎週馬場を読むのに苦労する。

サマー2000シリーズ開幕戦、七夕賞は当日昼の降雨の影響を受け、さらに悪化した馬場で行われた。8R1勝クラスの芝2000mは明らかに内側を避けた攻防ながら前半1000m1分0秒5のハイペース、勝ち時計2分4秒5、最後の600m39秒2もかかった。つづく9R織姫賞1800mは前半1000m1分1秒4、勝ち時計1分50秒9、どちらも初角二桁番手で回った馬たちが上位を占めた。

こんな馬場で行われた七夕賞は逃げたパッシングスルーが内を開け、1、2角で大回りしながら前半1000m1分1秒3。1勝クラスより遅い流れではあったが、後半1000m1分1秒2、バテもせず、道中は一貫して12秒台前半、ペースアップは難しくともペースダウンもしない一定のラップを刻む厳しさはさすが重賞。

一定ラップとなれば福島巧者の出番。1着クレッシェンドラヴは福島記念V、昨年七夕賞2着。3着ヴァンケドミンゴは全4勝が福島の屈指のコース巧者。福島で強い馬は緩急がなく、早めに動きはじめる競馬が得意、かつ荒れた時計のかかる馬場に高い適性を持つ。

勝ったクレッシェンドラヴは内枠から早めに外に持ち出し、前半は馬場のいい外目を追走。勝負所で先に動いた組がさらに外に広がることによってぽっかり空いた内側のスペースを突いて最後まで伸びた。

緩い馬場でもバランスを崩さず走る道悪巧者もさすがに最後は苦しがるものの、内田博幸騎手が右に体重をかけて走りのバランスを崩させなかった。外から内へ進路をとり、消耗と距離ロスのバランスを巧みにとったあたりも見逃せない。この夏、ベテランの戦略が冴える。

強気な競馬で2着ブラヴァス

2着ブラヴァスはコース巧者に囲まれながらの好走であり価値がある。これまでのキャリアで経験したことがない悪路にあたり福永祐一騎手は外枠を利して外から好位を確保、置かれないように強気な騎乗を展開、すぐ内にいたマイネルサーパスにプレッシャーをかける。芝の塊などが飛んでこないような位置取りで馬のストレスを回避した。

1、3着が後方に控えた組だっただけにこの強気な騎乗による2着は価値が高い。悪路を走ったダメージが心配だが、この先のサマーシリーズで楽しみな存在になりそうだ。過去10年で【0-0-0-20】と一切来なかった7枠での2着、データは強調すると裏目が出るものだが、これはブラヴァスに謝らないといけないだろう。

裏目が出なかったのはヴァンケドミンゴ。全4勝が福島、3勝クラスのエールSを勝ちあがった直後の出走で、そろそろ負けるのではといわれながらも3着確保。たしかに負けはしたが、福島巧者としての力は十分に示した。父ルーラーシップ×母父アグネスタキオン、時計を要する福島であれば重賞制覇のチャンスはいつか来るだろう。

2020年七夕賞位置取りⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』にて記事を執筆。YouTubeチャンネル『ザ・グレート・カツキの競馬大好きチャンネル』にその化身が出演している。

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